シロアリ薬剤

シロアリ業者に依頼するにしても、自分で薬剤を使用するにしても、防アリ材を選ぶにも、使用する薬剤のことを何も知らないで始めるのは心配です。薬害やムダな使い方をしないためにも、まず、最低限の知識・情報は必要ですので、一緒に学んでいきましょう。

シロアリ薬剤を知る

 シロアリはどんな種類であれ、薬剤の抵抗性は見られていない。ほとんどのシロアリは、薬剤を極わずかな量で死に至ります。つまり、個々のシロアリは弱く、薬剤に敏感なのです。1匹のシロアリを殺すには、薬剤はどんなものでも効き目はあります。市販のスプレー殺虫剤、園芸用殺虫剤、木酢液、柿渋、ヒバ油はもちろん、塩水やしょうゆでも簡単に死亡します。
しかし、シロアリは、
@蟻道や泥線などで守られている
A何十、何百万という大量に規律を持って生きている
という二つの理由から家屋の状況やシロアリの種類などによって、様ざまに対応
していかなくてはなりません。

薬剤のタイプ

業者に依頼するにしても、自分で薬剤を使用するにしても、シロアリに使用する薬剤のことを何も知らないで始めるのは心配です。まず、最低限の知識・情報は必要ですので、一緒に学んでいきましょう。
区分 内容 薬剤タイプ
液剤系 乳剤 成分を溶剤に溶かし、乳化剤によって水で希釈できるようにした薬剤
水和剤 粉剤を水で希釈して使用する薬剤
懸濁剤 フロアブル剤(FL)―成分を微細な粒子に成分を染み込ませて水に懸濁
マイクロカプセル剤(MC)―成分を微細なマイクロカプセルに包み懸濁
水溶剤 成分が水に溶けているもの
油剤 成分を有機溶剤で希釈したもので、多くは防腐剤を含んでいる。
粉剤系 粉剤 タルクなど微細粒子に成分を染み込ませたもの
粒剤 一定の大きさの粒子に成分を染み込ませたもの
固形剤系 スティック剤 成分をそのまま、または基材に混ぜてスティック状にしたもの
ペースト剤 成分に基材を混ぜてペースト状にしたもの
ベイト剤 基材に成分を混ぜて毒餌としてしようするもの
懸濁・・・液体中に個体の微粒子が分散し、混ざっている状態をいう。
溶剤・・・固体を溶かすために使用する液体のこと。 一般な水のほか、アルコールやアセトン、ヘキサンのような有機物も多く用いられる。
防腐・・・物の腐るのを防ぐこと。防腐剤は、腐食を防ぐ薬剤のこと。
タルク・・・滑石(かっせき)というミネラルの一種を主成分とする粉状の岩石の名称。

薬剤散布処理に使用されている主なシロアリ薬剤

区分 主成分名 薬剤タイプ 商品名
ピレスロイド系 ビフェントリン 水性乳剤、油剤など アリピレス
ペルメトリン 乳剤、油剤など ホルサーなど
d-d-T-シフェノトリン マイクロカプセル ララップ
トラロメトリン フロアブル、乳剤 ザオールなど
エトフェンプロックス 乳剤、油剤など メトロフェン
シラフルオフェン 乳剤、油剤など シロネン
ネオニコチノイド系 イミダクロプリド フロアブル、水性乳剤、油剤 ハクチサン
クロチアニジン マイクロカプセル、乳剤 タケロック
カルバメート系 フェノブカルブ マイクロカプセル バクトップ
フェニルピラゾール系 フィプロニル フロアブル グレネード
ピロール系 クロルフェナピル フロアブル ステルス
無機系 ホウ素化合物 水溶剤 ペネザーブ

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シロアリ駆除薬剤として使用されているもの

区分 主成分名 薬剤タイプ 商品名
フェニルピラゾール系 フィプロニル 粉剤 ターミドールダスト
成長抑制剤 クロフルアズロン ベイト剤(毒餌) エクステラ
ヘキサフルムロン ベイト剤(毒餌) セントコリン
スルフルラミド ベイト剤(毒餌) ファーストライン
ビストリフルロン ベイト剤(毒餌) ブリング、シロアリハンター
生物製剤 メタリジウム菌 バイオブラスト
生物製剤・・・生物学的製剤ともいう。最新のバイオテクノロジー技術を駆使して開発された新しい薬で、生物を材料にした薬品のこと。生物が産生した蛋白質を利用して作られています。
メタリジウム菌・・・昆虫に感染し、死に至らしめる。多くの昆虫に感染するが、菌種や菌株によって得意とする寄主が異なる。
成長抑制剤・・・シロアリの成長を抑制する成分が入った薬剤のこと。

たくさんのシロアリ駆除薬剤があって、シロアリの種類や生息場所や環境等に合った薬剤、薬剤の使用量を選択していく必要があります。

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シロアリ薬剤の歴史

●シロアリ薬剤は、猛毒?

 和歌山カレー事件は、まだご記憶ですか?シロアリの亜ヒ酸という薬物をカレーに混ぜて、大量無差別殺人が行われた有名な事件です。シロアリ薬剤は、危険という認識を国民に広く印象付けました。近年に亜ヒ酸の使用が発端となってシロアリ駆除という業種は、始まったと言えます。亜ヒ酸は業界のはじまりを切り開いた薬剤です。
すでに、亜ヒ酸は使用中止となりました。

●有機塩素系薬剤の台頭

 そして、50年代から主流は有機塩素系の薬剤(DDT・ドリン剤・クロルデン)に移行。「永久保証」や「10年保証」の時代となっていきます。有機塩素系薬剤を駆除に使用することで見事に10年以上も虫1匹も床下にいないことで、幅広くシロアリ駆除が一般の家庭にも広がっていきます。

専門的、伝統的な特殊な仕事であったシロアリ駆除が、「薬剤さえまいておけば、誰でも効果が得られる」程、強烈に効果があったからです。強力な殺虫力と持続力がある有機塩素系の薬剤の出現が、これまでイエシロアリ駆除を対象にしていたシロアリ駆除がヤマトシロアリとイエシロアリの両方が駆除対象へ移行していくようになっていくのです。

●シロアリ業界団体の善と悪

 また、この時代に建築業界と結んで市場は一気に拡大。シロアリ駆除業者は、急激に増加します。業界団体が、徐々に力を持つようになります。現場でシロアリ被害の状態に合わせてどう処理するか?を専門家が判断することより、業界団体の仕様書どおりに、業界団体が認可した薬剤を、仕様書で定められた場所に、定められた量を処理すること「シロアリ駆除」と定着させられてしまったのです。

●有機塩素剤の終わりと有機リン剤と薬害

 そして、有機塩素系の薬剤(DDT・ドリン剤・クロルデン)環境ホルモンとして、環境汚染や長期にわたる蓄積するから生態への影響があるため1986年使用中止となった。

次に「環境にやさしい薬剤」として登場したのが有機リン剤です。
ところが人への薬害が一気に拡大してしまう。その原因は、仕様書で定められた「薬剤の大量散布」にあったのです。
有機リン剤は、ガス化しやすく、大量散布され気体となって、居住空間まで入り込み、臭気がひどかったり、シックハウス症候群、アトピーなどの皮膚病の原因となってしまったのです。
シロアリが居ても居なくても、予防や駆除と称して、ともかく仕様書に書かれている通り、何百リットルも床下や木材に薬剤散布しなければ、こんな社会問題にならないはずなのに・・・。

●近年の薬剤事情

これまでは、業界は、「安全、確実、長持ち」する薬剤を求めてきました。シロアリのことを考えず、誰でも「薬剤さえまいておけば大丈夫」なシロアリ駆除を求めてきたのです。しかし、大量散布の仕様書最優先のため、行き詰まってしまいました。
 シロアリはどんな種類であれ、薬剤を極わずかな量で死に至ります。つまり、個々のシロアリは弱く、薬剤に敏感なのです。蟻道や泥線で守られなけれ、数百万から数万匹と大量に集団で生息している。これらのシロアリ独自の特長に目を向けて駆除に生かす方向へ進んでいきます。

●薬剤の製剤の形に工夫

1990年代から薬剤の製剤タイプに工夫されるようになり、変化していく。
例えば、忌避性のある薬剤もマイクロカプセル剤にすることで忌避性を取り除き喫食や接触による駆除ができるようになった。また、遅効性の薬剤を開発し、伝播性の高い液体やベイト剤ができ、少量で巣ごと駆除できる薬剤も作られるようになっていった。終に仕様書に振り回されたシロアリ駆除ではなく、シロアリに目を向けた駆除があらゆる薬剤の開発によって可能となってきました。あとは、本格的な技術者の育成に力を入れられれば、無駄な薬剤の使用や安全なシロアリ駆除が可能になるでしょう。

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シロアリ薬剤に対する考え方

 シロアリはどんな種類であれ、薬剤を極わずかな量で死に至ります。つまり、個々のシロアリは弱く、薬剤に敏感なのです。蟻道や泥線で守られなければ生きていけないほど、か弱いのです。安全だからと言っても、現場のシロアリの生態に合わなければ、不必要な処理であるし、単に薬剤汚染をしているだけなのです。

●どの薬剤が安全なのか?

読者のみなさんからの質問で、一番多いのが、「シロアリ駆除薬剤で安全な薬剤を教えてください?」「この薬は安全ですか?」です。
私は、こう答えます。「シロアリが死んだり、逃げたりするのが薬剤です。どんな薬剤も何らかの影響はあります。問題は、安全かどうかではなく、正しいシロアリ駆除か、どうかです」と。

●天然薬剤のヒバ油・木酢液・ゲットウエキスは?

天然薬剤であれば大量散布しても大丈夫ということではありません。もちろん、毒性の高いものより低いものが良いですが、使用する量によります。先に書かせて頂いたとおり、「安全かどうかではなく、正しいシロアリ駆除か」が問題なのです。安全性をアピールして大量散布する業者もたくさんありますので・・・。

●薬剤の処理だけでは限りがある?

シロアリ対策は、薬剤処理と家屋の構造と点検の3つを活用して行うものだと考えます。一つだけに頼ることもできないし、何かが欠けても難しくなります。予防も駆除も同じです。

●薬剤の特徴を生かしたシロアリ対策

誰でも簡単にできて、ごく少量の薬剤でシロアリ対策が近年可能となりました。それは、ベイト剤によるシロアリ管理システムです。シロアリ予防をお考えの方は是非、検討してみてください。⇒シロアリ対策ベイト法
また、消毒散布する時は、薬剤の特性を生かした使い方をすると効果が上がります。上記の薬剤の特性をよく知って活用しましょう。

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